レッドアイズ

プロローグ

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 突き出した右手は生暖かい感触を伝えた。
 筋肉繊維を分かち、内容物たる臓物ぞうもつをえぐる柔らかい質感…
 かつて味わったことのないおぞましい触感に、チェルシーの頭は真っ白になった。
「チェル…?」
 こぼれ落ちんばかりに目を見開いた眼前の少女――リリナは、自分の身に何が起きたのか理解できていない様子だった。
「…え、あ?」
 だが、それは加害者であるチェルシーにとっても同様だった。
 受け入れがたい現実に直面した彼女の思考は、その瞬間、麻痺まひした。
「あ、あ…」
 まるで、幻覚でも見ているかのようなリアリティーのなさ。
 己の右腕を伝わって溢れ出す親友の鮮血も、チェルシーにはできの悪い冗談のように思えた。
 勝利を確信して彼女が繰り出した、先手必勝の決め技。
 それは、相手の肺を圧迫し、昏倒こんとうさせる程度の威力しか無いはずだった。
 それが、どうしてこんなことになってしまったのか?
「リリナ…?」
 困惑顔のままゆっくりと崩れ落ちていく少女の姿を、チェルシーは呆然と見つめた。

 


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