第2研究室  創作に役立つ知識 | トップへ戻る |

文章力をつけるためには?

目次
はじめに
効果的な文章上達法
比喩のパターンを覚えて表現力を大幅にアップしよう!
作中に何度も同じ比喩、おなじ表現を使わないように注意しよう
体言止めの使用には注意を!
5W1Hを意識して書こう
叙述トリック
わかりにくい文章と交戦し殲滅せよ!


はじめに
 ライトノベルは漫画やノベルゲームと違って、
 物語を構成する情報が文章だけしかありません。
 読者は文章だけを頼りに、筆者がつむぎ出した幻想世界を頭の中に再構築します。


 もし、この唯一の媒介である文章が下手だったら、どうでしょう?
 そうなったら、どんなにすばらしいストーリーやキャラクターを生み出しても無意味です。
 読者は誤字脱字があるたびに引っかかり、
 意味もなく長いセンテンスに閉口し、陳腐な表現に拳を振るわせ、おしまいには
 『オレの貴重な時間を奪いやがって!』
 と怒りだすかもしれません(その前に、読むのをやめるでしょうけど……)。

 日本の国語教育は、小説を作るための文章技術を教えることを目的にはしていません。
 そのため、小中高あわせて国語の成績で5を取っていても、
 プロ作家の文章術にはまるで及ばないのです。

 学校の勉強だけで得た知識で小説を書こうとすると、絶対に失敗します。

 ですが、泣き言を言っていても仕方ありません。
 ここで、文章力を鍛えるための方法をお教えしましょう。

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効果的な文章上達法

 一般的に良く言われる文章上達法は

 
『文章力は読書量に比例する』
 『書けば書くほど上手くなる』

 ということです。
 これは確かにその通り、一片の疑いもない真実なのですが、
 コレをそのまま鵜呑みにすると手痛いカウンターパンチをもらいます。

 実例を上げますが、私の友人にライトノベルが死ぬほど好きな人間がいました。 
 彼はライトノベルをどっさり買い込んできて、貪るように読んでおり、
 ライトノベルに関しては何時間でも熱く語れるような男でした。
 でも、自分でファンタジー小説を書くとなるとまるっきりダメ。
 一度書いて「文章が下手だね」と仲間に言われたが最後、
 彼は自信を完全に喪失し、二度と小説というリングに立てない身体になってしまいました。
 なぜこんなことになったのでしょうか? 彼には文章のセンスが欠如していたのでしょうか?
 そんなことはありません。

 ただ本を読んでいるだけだったから、
 読んだ内容を知識として吸収し、活用するすべを知らなかったから、
 起きた悲劇にすぎないと私は解釈します。


 本はただ読めばいいというわけではないのです。
 読んだ。ああ、おもしろかった。で終わってはダメなのです!
 また、ただ書けば書くほど文章が上手くなるなんてことも絶対ありません。

 勉強して得た知識を作品の中で応用し、
 試行錯誤を繰り返さなければ、いくら書いたって無意味です。

  
 では文章力を高めるための勉強の仕方とは、一体何でしょうか?

 それは、ただ小説を読んでストーリーを楽しむのではなく、
 その本を書いた作家の技術を盗むように目を光らせることです!


 市販されている本は、それでご飯を食べているプロが考えに考えて作った作品ですから、
 素人には及びもつかない高度な文章テクニックが濃縮されています。

 それを盗みましょう。そして、自分の血肉に変えましょう。
 ストーリーやキャラクターをパクれば盗作だと騒がれるかも知れませんが、
 表現をマネしたぐらいで訴えられることなどありません。
 プロの技はどんどんマネして、どんどん応用しましょう。 
 では、どのようにすれば効率よく作家の技術を吸収できるのか?

 作家の林望さんは、その著書『「芸術力」の磨き方』において、このように述べています。
 p214「三人の文体アイドル」より引用。

 その後も、私の文章修行というのは、「臨模」が中心でした。
 これは大半の物書きがそうだと思いますが、師匠がいないので、
 誰かの文章を真似ることが必要になるんです。
 私の文体は、森鴎外、伊丹十三、北杜夫の三人がいわば憧れの文体アイドルで、
 彼らの文章をお手本にしてきました。

 
 以上引用終わり。

 「三人の作家を師匠と定めて、彼らの文章を模写して勉強する」
 という手法の有効性は、他の作家も述べています。
 1人の作家の作品をマネすることは、
 あなたをゴーストライターにしてしまう危険があります。
 マンガの世界でも、勉強のためにプロの作品を模写し続けたら、
 その先生そっくりの絵しか描けなくなってしたという事例が多々あります。
 つまりオリジナリティ、独自色といったものを潰しかねない……
  
 でも三人の作家から同時に学べば、それぞれの作家の長所を取り込むことができ、
 自分独自の文体を築く基礎を作ることができるのです。


 模写するのは大変、時間がない、根気が続かないと言う方は、
 次のことをだけでもしてください。
 
1:
 本を読んでいて、わからない言葉や言い回しが出てきたら辞書で調べる。
 そして、メモ帳に書き写したり、パソコンに打ち込んだりして保存しておく。

2:
 いいなぁ。と思うレトリック(比喩)や表現、描写がでてきたら、
 同じく抜き出して書き写しておく。

 これはうまい。これは知らなかったという語彙や表現を書いて覚えるのです。
 書くというアウトプット作業を脳にさせることによって、知識を定着させやすくできます。
 また、パソコンに語彙や表現集を作って保存しておけば、
 小説をパソコンで書くときに参考にしやすいです。

 語彙と表現力は小説家の財産です。
 これが脳内にインプットされていないと、
 どんなすばらしいアイディアを持っていても宝の持ち腐れに終わります。

 最近では、知識より創造力や思考力の方が大切だという風潮が、
 世の中に蔓延してきていますがこれは間違いです。
 知識あっての知性です。

 知識がなければ、考えることがまずできません。
 考えることができなければ、そこから独創的な発想など生まれるわけがないのです。

 
 一例をあげてみましょう。

●例1
 森の中に馬の走る音が響く。

●例2
 大地を叩く馬蹄の音が、森の静寂を破る。


 例1の方は、誰でも書ける文章でしょうが、
 例2の方は、ちょっと高度です。

 馬の足の先を馬蹄と呼ぶ知識がなかったら、馬蹄という表現は当然、浮かんできません。

関連情報・第4研究室「語彙はあるのに文章が書けません」 

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比喩のパターンを覚えて表現力を大幅にアップしよう!

 筆者の表現力があるかないかで、小説のおもしろさは格段に変わってきます。

 
陳腐なストーリーと平凡なキャラクターで組まれた話しでも、
 筆者の表現力が豊かだと、ある程度おもしろく読めます。


 脚本家は三流でも、役者が大スターで、
 最新のCG技術をふんだんに盛り込んだ映画がウケるのと同じ理屈です。
 さて、この表現力とは語彙もさることながら、比喩をいかに巧みに使えるかに関わってきます。
 比喩とは、何かに例えて物事を表現することです。
 比喩がいかに強烈な力を持つか、例をあげてみましょう。
 
●比喩を使わない文章例
 満開の桜の木。
 舞い散る桜の花弁に、あたりは満たされていた。 

 
●比喩を使った文章例
 爛漫と咲き誇る桜の花。
 そよ風が梢を揺らすたびに、花弁は飛沫を散らすかのごとく宙を舞う。



 上が比喩を使わないバージョン、下が比喩を使ったバージョン。
 どちらが、より読者に訴えかける映像を伴っているかは一目瞭然でしょう。
 文章が上手くなりたい人は、いろいろな比喩のパターンを研究してみることをオススメします。
 あまりに陳腐な比喩を使うことは逆効果ですが、
 より多くの比喩のパターンを知っておくことが自分独自の表現を編み出す下地になります。


 例えば
 
 まるで腫れ物に触れるかのように、浩二はやんわりと言葉を継ぐ。
 
 夜の校門は、死んだ貝のように閉じられていた。
  
 細波のような不安が心を騒がせる。

 心の中に相手の気持ちを過度に尊重する病原菌を何百滴も注入することは、有害だと思っています。

 左の豪腕が疾風と化して空気を切り裂き、凶音を轟かせる。

 過度の「やさしさ」という地雷を抱えた問題児。

 少女の手の中で、凶暴な鋼鉄の獣が火を噴いた。
 小気味よい反動が肩を叩くと同時に、暴漢の頭がスイカのように爆ぜ割れる。  

 読書感想文なんてものは、三流評論家養成ギプスのようなもので、
 口だけ上手い嫌みな人間を作るだけである。文部省はそんな人間を作りたがっているのだ。

 学校に行くための、上り下り上り下り。
 それはまるで人生のような波乱を思わせ、行く者の心と足をげんなりとさせるのである。

 友情とは信頼という大地に立つ勇気という樹に咲く、一輪の大花。



 といった比喩表現を本の中から抽出して、書きまくり覚えまくりましょう。

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作中に何度も同じ比喩、おなじ表現を使わないように注意しよう
 
 作品の質を高める文章技術の1つとして、
 同じ表現を作中に二度使わないというモノがあります。

 
 重複した表現を使ってしまうことは、自分には力量がありませんと公言してしまうようなモノです。
 注意して、そのような事がないように努めると同時に、
 同じ事柄を表す様々な表現方法を身につけましょう。
 例えば『怒る』という人間の感情を表す表現を、あなたはいくつ思いつきますか?
 20個以下では落第です。
 怒りは、人間の基本的な感情なので、長編小説の場合だと必然的に
 登場人物が怒るシーンが何度もでてくると思います。そんな時に対応できません。
 では例として、『怒り』を表す言葉を並べてみます。


 怒る。 憤る。 激怒する。 赫怒する。 激昂する。 憤怒する。 憤激する。 憤慨する。 憤死する。 憤然と席を立つ。 憤懣やるかたない。 怒髪天を突く。 怒鳴る。 声を荒あげる。 目尻を吊り上げる。 眦を決する。 柳眉を逆立てる。 顔を紅潮させる。 怒気を漲らせる。 頭に血が上る。 拳を握りしめる。 地団駄を踏む。 顔が赤黒く染まる。 怒りに全身が震える。 怒り心頭に発す。 ティーカップを床に叩きつける。 デスクを叩く。 睨みつける。


 『怒り』を表す言葉は、こんなにもたくさんあります。
 これに比喩表現を加えれば、怒りを表す文章は工夫次第でいくらでも作れます。
 1つの動作や感情を表す方法を、なるべく多く学んでください。

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体言止めの使用には注意を!
 
●例1 歓喜のうなりを上げるエンジン。
●例2 彼のくれた花束。
例3 紅の残照に沈む銀杏並木。
例4 夏の陽射しを浴びて銀色に輝く海原。
例5 凛とした声を響かせる少女。

 ↑これらの文章は、『体言止め』と呼ばれます。
 『体言』とは、国語の教科書風に説明するなら、「自立語で活用しない、文の主語にできるモノ」。
 要するに『名詞や代名詞』のことですね。
 『体言』である名詞や代名詞で『止める』から『体言止め』と呼ばれます。

 この体言止めは歯切れが良く、余韻・余情を生じさせるのに効果的です。

 文章に味わいを持たせることを追求した和歌・俳諧から生じた描写テクニックです。
 描写などに使用すると、場面の美しさをより引き立てることができます。
 ただし、「わー、これは便利な技だぁ!」などと思って、安易に多用してはいけません(汗)。
 体言止めはブツブツと途切れた形になるため、
 読者に対して、とても投げやりな心証を与えるのですね。
 
しかも、過分に余韻・余情を生み出すと、
 筆者が自分の文章に酔っているような悪い印象も与えます。

 そのため、連続で使用すると、逆に文章の質を落とすことに繋がってしまうのです!

 例えば、
「キミの好きな食べ物は何ですか?」
「ラーメン」
「ラーメンです」

 どちらの言葉遣いに好感を持ちますか?
 「ラーメン」と体言止めで答えた方には、投げやりな感じを受けるでしょう。
 このように体言止めは、メリットとデメリットを併せ持っています。
 そのため多用や連続での使用は避け、余韻を残したい、ここぞという場面に使ってください。

 また、ワザと投げやりな感じを演出するために使うという方法もあります。
 使い方を工夫してみてください。

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5W1Hを意識して書こう
 
 小説を書く際に気を付けなくてはならないのは、
 登場人物の置かれた状況をいかに読者に伝えるかです。
 説明不足だと、なにがどうなっているのかわからないし、
 説明が多いと、うざったく感じられます(汗)。
 登場人物の置かれた状況をうまく読者に伝えるのは難しいのですが、1つだけコツがあります。

 それは5W1Hを念頭に置いて書くということです。

 5W1Hとは、英語のWhy、What、Who、Where、Whenのそれぞれの頭文字をとった5Wに、
 Howの1Hを加えたものです。
 簡単に言うと、「誰が」「いつ」「どこで」「なにを」「なぜ」「どうやって」行ったか?
 を明確に相手に伝えましょうね。ということです。
 この5W1Hが不明瞭の場合、意味不明でわかりにくい文章になってしまいます。

 そのため、冒頭や場面転換後のシーンでは、
 「誰が」「いつ」「どこで」「なにを」「なぜ」「どうやって」行ったか? 
 を、すばやく明確に示す必要があります。

 「意味不明、わけがわからない」と読者から批評される作品は、
 たいがいこの基本原則に反してしているのが原因です。


Who
誰が
What
何を
When
いつ
Where
どこで
Why
なぜ(どんな目的で)
How
どうやって

 物語をわかりやすくするために、5W1Hを意識して小説を描くようにしましょう。

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叙述トリック

 ミステリー小説などに使われるトリックは、犯人が被害者や探偵、警察を騙すために使うモノ、
 いわば、キャラクターがキャラクターを騙すためのトリックです。

 これに対して叙述トリックとは、作者が読者を騙すべく仕掛けたトリックです。

 例えば、当サイトの高得点作品掲載所に掲載されている
 北崎陽一郎さん著作「雨の降る公園にて」も叙述トリックを使った小説です。
 この作品を例に使って、叙述トリックについてご説明しましょう。

 「雨の降る公園にて」の主人公は、アキラという若者で、自分のことを僕と呼びます。
 アキラは自分を襲った兄を返り討ちにして殺してしまいます。
 その場面を目撃され、警察は目撃談から「細身の少年」を犯人として探します。
 しかし、アキラは3年経っても捕まりませんでした。 
 なぜでしょうか?
 
 それは、実はアキラが男装趣味のある女の子だったからです!

 物語の最後に、アキラが女性であることが明かされます。
 アキラを男性だと思いこまされていた読者は、最後にやられたー! となるわけですね。

 このような性別の誤認。男性だと思われていた人物が実は女性だった、
 もしくは女性だと思わせて男性だったというパターンが、
 もっとも手軽に行える叙述トリックです。


 叙述トリックは、小説という形式自体の暗黙の前提や偏見を利用したテクニックです。
 もし、「雨の降る公園にて」が漫画やアニメだったら、
 外見からアキラが女性であることが、すぐにバレてしまうでしょう。
 でも、小説では漫画やアニメと違って視覚に訴える情報が無いため、
 文章を巧みに使って読者をミスリードさせることができるのですね。
 ちなみに、叙述トリックとはあくまでも心理的な誘導を行うことであり、
 意図的に偽の情報を与えるといった行為はこれに該当しません。

 読者に与える情報は「事実」のみである事が重要です。

 他にも、人物Xを人物Aだと思わせておいて、実は人物Bだったという人物誤認や、
 現代の話だと思わせて、実は50年前の物語だったなど、時間を誤認させる叙述トリックもあります。
 この2つを組み合わせて作られたのが、
 富士見ファンタジア文庫で大賞を取った「12月のベロニカ」です。
 この作品では、一話ごとに現代と50年前が入れ替わる構成を取っています。
 ヒロインの名前を伏せ、一人称形式の特徴を上手く利用しているので、
 終盤で種明かしされるまで、時間軸と登場人物が入れ替わっていることに気づきませんでした。 
 この叙述トリックの巧みさが12月のベロニカが大賞を取れた大きな要因だと思っています。
  
 叙述トリックは一般文芸ではよく使われますが、
 ライトノベルでは、このテクニックを使った作品はあまり見られません。
 そのため叙述トリックをうまく作中に組み込むことができれば、
 ひと味違った作品として注目されるでしょう。
 
関連情報・第4研究室「ライトノベルに叙述トリックを使ってもよいか?」

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わかりにくい文章と交戦し殲滅せよ!

 小説を書くことを志したあなたは、恐るべき敵と戦うことを宿命づけられました。
 その敵とは『わかりにくい文章』です。
 敵は強大です。しかも、テロリストのようにどこに潜んでいるかわからず、
 油断しているところに散発的な攻撃を仕掛けてきます。
 ときには推敲(文章の見直し)というレーダーの目をかいくぐり、
 完成した小説の中に爆弾となって潜伏している可能性もあります。
 倒しても倒しても、奴らは文章を書くたびにウジャウジャ湧いてきます。
 この人知を超越した敵の手によって、今までに何人もの同胞が葬らてきました。
 かくいう私も、このライトノベル作法研究所に侵入し、
 この施設の機能を失わせようと画策している奴らと影ながら戦っています(笑)。

 あなたも、小説を書く際は『わかりにくい文章』と戦わなければなりません。
 敗北は許されぬ厳しい戦いです。ですが安心してください。
 奴らを倒す、必勝法をあなたに紹介しましょう。 

 
わかりにくい文章とは、長い文章
 ゴチャゴチャした長い文章ほど、わかりにくい悪文はありません。
 例を上げてみましょう。

●例1
 賢治は悲鳴を上げながら、ただ己の指先にのみ救いがあるかのような錯乱に囚われて、
 遮二無二、引き金に絡んだ指を屈伸させた。


 この文章は、賢治という主語に対して、
 『悲鳴を上げる』『錯乱に囚われる』『指を屈伸させる』という3つの述語が対応しています。
 この様な文は、一目で内容を理解するのが難しいです。
 主語に対して、述語は1つ、多くても2つ以内にすると良いでしょう。
 この例文をわかりやすく直してみます。

●改善例
 賢治は悲鳴を上げながら、ただ己の指先にのみ救いがあるかのような錯乱に囚われた。
 彼は遮二無二、引き金に絡んだ指を屈伸させる。


 このように、長い文章は短い2つの文章に分けてみましょう。
 文章が短くなれば、内容がぐっと理解しやすくなります。
 ちょっとこの文章は長いかなと思ったら、迷わず2つに分解できないか考えてみてください。
 文章をわかりやすくするための最高のコツは、とにかく文章を短くすることです!

 もう一つ、例を上げてみましょう。
 言語明瞭、意味不明瞭の代表選手、日本国憲法前文の一部です。

●例2
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、
 政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、
 自国の主権を維持し、他国との対等関係に立たとうする各国の責務であると信じる。


 清々しいほど、わかりづらい悪文です。何を言いたいのかサッパリ分かりません(笑)。
 読者に対する配慮がゼロ、いや幻惑しようとさえしています。
 『われらは』と『いずれの国家も』と初めに主語が2つ現れ、
 意味がわからずに首をひねっている最中に、『この法則に』と、さらに主語が現れます。
 一体何が文章の主役なのか、わかりません。
 さらに『政治道徳の法則は、普遍的なものであり』という余計な装飾が付いており、
 これがこの文章を意味不明にするために効果的に作用しています。
 トドメは『であると信じる』という、典型的責任逃れの曖昧表現。
 これなら、読む人間の都合の良いように、どうとでも解釈できますね。

 僭越ですが、この超弩級の悪文をわかりやすく直してみましょう。

●改善例
 我らは、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない。
 この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国との対等関係に立たとうとする各国の責務である。


 余計な装飾を削り、文章を2つに分けてみました。 
 これで、グッと読みやすくなりましたよね。


「が」を削る
 わかりやすい文章を書くための最大のコツは、文章を短くすることです。
 そのためのポイントとして上げられるのが「が」を削るコトです。
 「が」には逆接の「が」と順接の「が」があります。
 逆接の「が」は、「しかし」「だが」などで区切り、2つのセンテンスにしてしまいましょう。

●悪い例
 文章上達のためには本を読むことも大切ですが、
 本だけ読んで、実際に書くことをおろそかにしていはいけません。


●改善例
 文章上達のためには本を読むことが大切です。
 しかし、本だけ読んで実際に書くことをおろそかにしてはいけません。


 このように逆接の「が」を削って、文章を2つに分け、それぞれを短くすることができます。

 順接の「が」の場合は、単に「が」を削って文章を2つに区切るだけで意味が通ります。
 
●悪い例
 夢がアイディアの宝庫だという話は聞いていましたが、
 実際に夢を記録すると、その中から小説で使えるネタが見つかりますね。


●改善例
 夢がアイディアの宝庫だという話は聞いていました。
 実際に夢を記録すると、その中から小説で使えるネタが見つかりますね。


 このように「が」を削ることで、文章を短くすることができます。
 文章をわかりやすくするためには、文章を短くすることが大切です。
 文章を書き上げた後でいったん見直し、もしわかりにくい長文となっている部分に「が」があれば、
 その箇所で二つに分けて短くしてしまいましょう。


代名詞の使用には注意
 『コレは』『ソレは』『彼は』『彼女は』といった代名詞は便利ですが、
 何を示しているのかわからない場合があります。


 現実の生活でも「おい、ちょっとソレ取ってくれ」と言われて「ソレって何?」と、
 とっさに反応できないことがありますよね。それと同じです。
 特に、指示されているものが、文中の離れたところにある時は、誤解が生じやすいです。
 また、そこに複数の人間がいる状況で『彼は』『彼女は』という表現を使うことは、
 読者を混乱させる要因になります。
 「彼女って、ここには女の子が2人いるんだけど、いったいどっち?」
 という疑問を持たれたらアウトです。

●例
 詩織ちゃんが、妹さんを連れて遊びにきました。彼女は得意のピアノ演奏を聞かせてくれました。

 この文章では、「彼女」という代名詞が指す相手が、
 詩織ちゃんなのか、彼女の妹なのかあいまいです。
 どちらの女性がピアノ演奏を聞かせてくれたのかわかりません。

●改善例
 詩織ちゃんが、妹さんを連れて遊びにきました。妹さんは、得意のピアノ演奏を聞かせてくれました。

 ここでは代名詞を使わずに書けば意味がしっかり通ります。
 代名詞を使う場合は、読者に誤解や混乱を与えないように注意を払ってください。
 

句読点の使い方を考える
●例
 碧眼のかわいい女の子

 上の文のように修飾語が連続して複数ある場合、碧眼がかわいいのか、
 女の子がかわいいのか、わからなくなります。

 これを避け、あなたの意図することを読者に伝えるためには、句読点を打つ必要があります。

●改善例1
 碧眼の、かわいい女の子

 こうした場合は、碧眼を持った、かわいい女の子という意味になります。

●改善例2
 碧眼のかわいい、女の子 

 この場合は、碧眼がかわいいという意味になります。
 女の子の印象全体が、かわいいかどうかはわかりません。
 とりあえず私は、かわいいと信じたいですが(笑)。

 句読点を打つことは、文章を書く上での基本事項です。
 しかし、これが意外と難しくて、
 たまに入れ忘れたりする失敗を犯す場合がありますので、注意してください。 
  

専門用語の使用をひかえる
 一般の人になじみの薄い専門用語は、使わない方が無難です。
 その様な言葉を使う必要に迫られたら、
 他の言葉に変換するか、あるいは注釈を加えると良いでしょう。

 専門用語を連発する文章が、どれだけわかりづらいか例を上げてみます。
 作家の清水義範さんの著書『日本語必笑講座』に出ていた一文がおもしろかったので、
 引用させていただきました。

●例
 門外漢には耳慣れない言葉が多くて少々わかりにくいかもしれないが、
 私が最近凝っている「アムアクタード」始動のさせ方をここにちょっと引き写してみよう。
「始動させるにはまず、始動インテルスをイン・ザ・ムードにしなければならない。
 そうではなく直接に命令ドームにキプロスすると、
 テレモムが文字連動してしまいコンパリン上に反逆する。
 故に、カムカがシフトしているのを確認してから、
 マサチューセッツまでCHQアイラインをほどこするのが先決である。
 しかる後に、GOインポとWENTモゲラを電磁界的幽閉作動基盤解放素子の上に、
 まんべんなく陳列すれば勝ったも同然である」
 こう書き写してみても、まだ「アムアクタード」について知っている人は1人もいなくて、
 もちろん私もよくは知らないというのが現状なので、なんのことかサッパリだと思う。
 それもそのはずで、以上は全部デタラメなのだ。


 以上引用終わり。

 どうでしょうか?
 なかなか最後に愉快なオチがついてますが、
 専門用語をやたら使って書かれた文章がいかにわかりにくいか、実感できると思います。
 パソコンに触れたこともない初心者に、
 パソコンマニアがOSがどうだの、CPUがどうだの話すのと同じ事ですね。

 門外漢には宇宙人の言葉としか聞こえません。

 私も銃が好きなものですから、
 作中に357マグナム弾だの、九ミリパラベラム弾だの、ブルパップ式のアサルト・ライフルだの
 専門的な用語を使ってしまうことがあります。
 弾丸の方は、まあ、良いとして、
 ブルパップ式の銃なんて言われてもガンマニアや軍事オタクでもない限りわからいでしょう(笑)。
 そういう場合は、ブルパップ式とは銃身を切りつめ、
 トリガー部をマガジンの前方に位置するようにした銃である。
 全身がコンパクトで取り回しが容易であるという利点がある、と説明を入れるようにしています。
 こうすれば、専門知識のない人にも理解してもらえます。

 ただし、車が好きが高じてレースを題材にした小説なのに、
 1ページまるまる車のスペックの説明に費やして失敗した作家の事例がありますので、ほどほどに。

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